ユニークな暮らし方

先週の土曜、友人のハウスパーティに招待してもらったのでワインとチョコレートを手土産に行ってきました。友人はオランダ人のカップルで、彼は家具や内装のデザイナー、彼女は写真家です。彼らは、最近うちの近所のコミュニティハウスに引っ越してきて、今年はそのコミュニティハウスの20周年記念の年なのだそう。

この”コミュニティハウス”の暮らし方がとても興味深く、面白いので紹介しますね。コミュニティハウスとは、アパート全体を数家族で共有する暮らし。ドイツでは珍しくない暮らし方らしいのですが、日本ではなかなかないコンセプト。1軒家を3〜4人で共有するシェアハウスとはまた違う感覚、アパートの建物全体をシェアしているのです。上下階に行ったり来たりと大きな家のよう。

食堂の入り口

古いアパートの1棟でこのプロジェクトが始まったのは20年前—ちょうどベルリンの壁が崩壊し、西側から東側に若者が流れてきた頃の話です。家賃もないし、オーナーもいない空き家だらけだった東側で、人々が自由に建物を占拠して住み始めた頃。当時はこのアパートも廃墟に近く、屋根もなかったので、アーティストや駆け出しのデザイナー達が自分たちで少しずつ改装を進めていったそうです。アパートの階段の壁には、改装の過程の写真やその後のコミュニティハウスの歩みが展示されていました。大人も子供も一緒になって住民みんなで屋根の上でピクニックしていたり、夏には大きなコンテナに水を貯めてプールにして水浴びをしていたり、写真から”ワクワク”が伝わってきます。

現在このアパートには20人ほどが一緒に住んでいて、その中には子供連れの家族もいます。各自もちろんプライベートの部屋があるのですが、例えば、アパートの各階にリビングルームがあり、どこのリビングルームも自由に使うことができるのです。2階にはカフェテリアがあり、1ヶ月に1度、夕飯を作る当番が回ってくるそう。朝食と昼食はそれぞれでとりますが夕食は大体この食堂で当番の人が作った夕飯を食べるのだそうです。ところどころに遊び心が見え隠れする内装は、程よい力の抜け加減が素敵でした。

まずは、いつも彼らが夕食をとっているダイニングでみんなで食事をしました。

普段は大きなテーブルを皆で囲んで食事をしているそう

しばらくすると、このアパートに住んでいる子がギターを弾きながら歌を披露してくれました。

このアパートで生まれ育った15歳の男の子。ジャクソンファイブを彷彿させる、伸びやかで綺麗な歌声!

デュオをつとめるシャイな彼女。リズムをとるために二人が目を合わせる時の彼女のナイーブな目が愛らしかったなぁ。ふと彼女のタイツが電線してるのを発見。そして、そのタイツの電線を見た瞬間に、彼女がより魅力的に見えました。急に親近感が湧いたというか。私にとって、ベルリンがこんなに心地いいのはそんな理由かもしれません。電線したタイツは、ロンドンや東京やニューヨークには似合わない気がするから。

友人カップル

友人は二人ともフリーランサーなので、普段一人で仕事をしています。下手したら、1日中パソコンに向かっていることも。だから、こういう家で暮らすことを選んだそう。さらに、ベルリンという新しい土地で生活を始めた彼らにとって、この暮らしは出会いの宝庫。他の家族が夕食に友人を招いたりするので、自分の行動範囲だけでは知り得ない人との出会いがあり、人脈が広がり、しいてはそれが仕事に繋がっていくこともよくあるのだそうです。

同じくオランダ人の彼女はドイツでミュージカルシンガーをしています。お父さんがモロッコ人、お母さんが日本人のハーフ。とても気持ちの良い人で、すぐに意気投合しました。

「みんなワイン飲んでるけど、あたちは哺乳瓶でミルクよ〜」

4階にはリビングのロフト部分にライブラリースペースがあり、バルコニーで本を読むこともできます。その上の階には、多目的ルームがあって、ヨガをやったり合気道をしたり、子供の遊び場になったりしているそうです。

ライブラリースペース

ここも共有スペースのリビングダイニング

そして、なんと地下にはバー/クラブがあるんです!!このクラブは普通にビジネスとして運営されていて、20代前半の若者向けというよりは、少し落ち着いた感じで楽しめる雰囲気です。

パーティのために、住民みんなでふくらました何百個もの風船が漂っていました!

みんなフレンドリーで、建物いっぱいに温かい雰囲気が溢れていました。他の家族と暮らしを共有するので、入居の際には厳しい審査があり、入居前に何度かみんなと一緒にご飯を食べたりして交流を深め、住民の合意のもと、入居が認められるそうです。

こういう暮らし方は、性格によって向き不向きがあるとは思うけれど、人間関係が希薄になりがちな最近の社会の中で、これから注目されていくのではないかと思います。送信ボタンをクリックするだけでコミュニケーションが取れる時代だけど、だからこそ、彼らの暮らし方がとても希有なものに見え、私にとっては衝撃でした。日本では、そんなのめんどくさいって思う方が大多数なんだろうなぁ。

0時になると、20周年記念のケーキが運ばれてきました!

ケーキにはクリームで『20』と書かれています

夜中に濃厚なガトーショコラ・・・

石畳の上を自転車でガタガタ走って帰宅したものの、胸がいっぱいでなかなか寝付けませんでした。彼らが偶然近所に引っ越してきてすごく嬉しい!素敵な人達と出会い、素敵な時間を過ごすことができました。招待してくれた友人に感謝です。

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