Archive for 11月, 2011

鹿ヶ谷山荘

火曜日, 11月 29th, 2011

京都の大文字山の麓に、絶景のロケーションに建てられた山荘を改装した
京料理屋があったということは聞いたことがありました、、
それが、今回、開催されていた5人展という5人の作家による
展示会場の場所だということは、その会場に行くまで気づきません
でした。

哲学の道から、東山に向かってひたすら急な坂を登り続けます。
もう息もきれぎれになる山の麓まで歩き続けると、正面に
ふわっと、木々に囲まれたサインが現れます。ジブリの世界を思わすような
不思議な第一印象です。

石段のアプローチを登ります。
山荘が徐々にその姿を現します。
自分が階段を登るスピードに合わせてでその全貌が少しずつ現れます。
自分の目線が映画のカメラになったような、ストーリー感のある
アプローチです。


建物のテラスからは、東山が一望です。

建物に入るとすぐに
大きな無垢でできたカウンターと山を取り込む一面ガラス張りの
空間になります。
この空間がすごすぎる、、、
内部でありながら、外部のような空間。
1日の空の色。
季節の木々の色。
その自然の要素を、 吹き抜け空間がダイナミックに包み込みます。
写真では全然、空気感や雰囲気が伝わりませんが、
一歩空間に踏み入れた時の衝撃は、僕は、京都でも屈指だと思います。

今回は、このカウンターで、五人の作家の中で、工芸家としてではなく
(他の4人の方は工芸家です)、コーヒー豆の焙煎所を営む
大宅(オオヤ)稔さんのコーヒーを飲めるということです。
素材のこだわりや、本当においしいものを作り上げるという信念は、優れた
工芸家の姿と重なる。今回、普段、なかなかお目にかかれない
宝石のようなコーヒー豆を味わえるということで早速、カウンターの特等席に
座ります。オオヤさんのコーヒーは、茶道に通じるといわれているそうなので、
楽しみです。

豆は、数十種類から選びます。
様々な産地や焙煎にこだわった豆が並びます。
お客さんの気分や、好みに合わせて、焼き加減、
濃さ、そして器までを選定していただきます。

僕が、今回選んだのは、香りが独特なマンデリンという豆を選定しました。
マンデリンは、漆の器で飲むと一層香りが引き立つということです。
今回、僕が選んだ豆は、漆の器ということでしたが、豆によって、
そのコーヒーが一番おいしく飲める素材(陶器など)や
また器のサイズ(とっくりのような小さな器で噛めるぐらい濃く煎れたり)
をオオヤさんが選定してくれます。

オオヤさんは、コーヒー豆は、果実であり、木の実であるという。
今回僕が選んだマンデリンは、
まず香りは、オオヤさんいわく、奥深いコーヒーの香りの中にお米を炊いた時のような香りがすると説明してくれました。確かに、なんともいえないおいしそうな
お米の匂いがします、、それが漆の器の香りと混ざって、んんんー、
大地のめぐみ!!(大げさですね、、)といった印象です。
飲んだ後に口の中に残る、かすかな酸味と果汁のような味がふわっと広がります。
確かに、、、コーヒーは、ジュースですといわれれば、、苦いジュースって
例えることも納得させられるぐらい爽やかな後味です。
そして、時間をかけて飲むことによって、どんどん味が変わっていきます。

インスタントで、すぐ出来上がるのもコーヒー。
豆を選び抜き、焙煎し、挽いて、丁寧にドリップするのもコーヒー。
前者と後者では、同じコーヒーでも値段は、全然違うかもしれません。
インスタントより何倍も高いお金が必要ですが
その何倍もの満足感や幸せを与える。
それが、仕事をするということだと思いました。
すばらしい空間とすばらしい珈琲でした。

想像

月曜日, 11月 21st, 2011

京都ではお寺などでライトアップが始まっています。
赤や黄色に染まった紅葉が光に照らされて本当に綺麗です。

でも、僕は想像します。
もちろん京都の寺社仏閣が建立された頃に、LEDや照明器具はなく、
月の明かりと灯籠の蝋燭の灯りのみ。
そんな光に灯された空間や庭は、どんなに幻想的であったか、、

月の明かりが池に写りこみ、月光の反射が紅葉を照らす。
蝋燭の揺らめきが、紅葉の落葉をより幻想的に演出する。
完全なる”闇”の世界に浮き立つ”光と色”。

一度でいいから、そんなライトアップ(当時の明かりで見る世界)も
見てみたいです。

昨日、京都文化博物館で特別展示されている”京の小袖展”に
行ってきました。
桃山時代から江戸時代までにかけて、鎖国下で外国の影響を
受けない日本独自の純粋なデザインを体験できます。
1枚1枚、物語やメッセージを込めて作りだされる繊細な
染めや織りの小袖はどれも本当に美しいです。

特に僕が感動したのは、
白い麻地をベースに唐扇と花束の文様をあしらった小袖です。
その上質な麻地は、当時の越後で布を20日近く雪の上に
さらすことによるオゾン漂白作用によって、
雪のようなやわらかい白地が得れるというもの。
まさに雪の”白”の表現であり、雪を纏う(まとう)という
想いなのでしょうか。
もちろん、これは江戸時代に製作されたものですから傷みや色落ちがあり
当時の白色からはかけ離れているかもしれません。

でも想像します。
この小袖の、
雪景色の陽光に照らされ輝く朝の雪のような白を。
月に照らされ幻想的に浮かび上がる夜の雪のような白を。

雪を使って、雪の白を表現する。
そんな詩的なプロセスを考えだす日本人の美的センスと技術は、
世界最高峰だと思います。
京都に在住の方や、来られる予定の方は、
是非、日本が誇る世界屈指の美しさを体験して想像して下さい。
特別展”京の小袖” 
日本の文化って、本当にすごいです、、、

奇跡の話~天使~

水曜日, 11月 9th, 2011

フィンランドのアアルトいう建築家のスタジオ見学で
たまたま出会った日本人の建築家の方がいます。
出会った時、
京都に住んでいるとの事で、帰国したら一緒に飲みにいきましょー!
なんて軽いノリで感でその場で別れました。

それから本当に帰国してから飲みに誘っていただいたり
自宅で晩ご飯に招待していただいたりと、
仲良くさせてもらってます。
夫婦で建築家として活動されていて、建築家としても人としても
大変素晴らしい方で、フィンランドで京都の友人が出来るなんて
不思議だな〜と思っています。

先日、その夫妻のカレーパーティー(旦那さんが1週間かけて仕込むカレーが
夫妻の友人界隈ではかなり有名らしく)に招待され、
その会でまた新しい素敵なパートナーのお二人との出会いがありました。
お二人はこちらがあっけにとられるぐらい息のあった会話のやりとりが
おもしろくて新たな素晴らしい出会いでした。
その男性の方が作家さんで、今度、個展があるのでまた来てねー!
なんて軽いノリでその場は別れました。

そして昨日、その方、川添洋司さんの個展の初日ということで
早速、京都の画廊にお邪魔しました。
ああ!!misoさん!!と気さくに出迎えてくれました。

ここで話しは変わって、広島。
仕事のパートナーである広島のS.O.N.さんのお母さんの名月(なつき)さんは、
すごく尊敬できる方で、いつもお会いするのを
楽しみにしている方です。
かなり前に、名月さんの美術コレクションの中で、
よく見させていただいていた作品があります。
もうかれこれ10年ほど前に購入した作品らしいのですが
すごく気にいってるという、錆びた釘を木で表現している作品がありました。
(一見、錆びた釘にしか見えなくて、触ると木の彫刻とわかる)
僕もこの作品が大好きで、お邪魔する度に、
触ったり、じーと見たりしていました。

話しはまた戻って、京都。
今回、初めてギャラリーで洋司さんの作品を見させていただき、
すごく繊細でやさしい印象受けながら、見て回っているうちに、
………….??????
『あれ?』どこかで見たことがある??
ん?ん? えっ!これって!!!
なんと、なんと、なななななんと、、、、、
実は、その釘の作品のアーティストが川添洋司さんだったのです!!
思わず、その場で名月さんに電話して、電話口で2人の10年ぶりの
再会となりました。
なんて、すごい縁の巡りだと思いませんか?
フィンランドの出会いから、京都の出会いにつながり、
京都から広島に10年の月日をかけての縁の巡り。
その縁/円にすごく感動して、もう驚きと幸せな気分でいっぱいでした。

そしてそんな奇跡の舞台となった今回の洋司さんの個展のテーマが
なんと『天使』。
まさに天使が運んできた奇跡のストーリー。

すべての
彫刻が天使をモチーフに製作されていて、
今まで出会った過去の人の顔が記憶の中の天使の顔になってるとのこと、、
実の父親だったり、、はたまたどこかで出会った人だったり、、

ギャラリーの片隅で、度々訪れるお客さんと談笑しながら
その場でも作品を作りつづけている姿に、
僕は洋司さんの背中にも羽が見えました。
普段(特にお酒の席は)下ネタ全開な洋司さんらしいですが、
今日は、
巡り巡って僕の前に降り立った天使に見えてしょうがなっかたです。

京の灯り作品展のお知らせ

水曜日, 11月 2nd, 2011

今週の日曜日(11/6)まで京都の建仁寺両足院にて
置き型の照明器具の作品展が行われています。
misoも作品を展示させていただいております。
うれしいことに『優秀賞』にも選ばれていますので、
是非、京都の方や京都に来られる予定の方はご覧下さい。

スポンジの素材(2液性発砲ウレタン)を使用して
今までになかった素材感と製作手順で
見るだけの照明ではなく、触ってみて
温かみを感じたり、感触を楽しむという
(視覚だけではなく触覚でも灯りを感じる)
コンセプトの照明器具を提案しました。
おもわず手に取ってしまうような
砂糖菓子のような繊細で美しく京都を感じる
照明器具を目指しました。
製作の工程も砂糖菓子作りのように
まず型を製作して、その型に液を流し込み、
膨らみ固まってから型をとって、
模様と形状を作るプロセスで製作しました。
(本当にお菓子をつくってるような感じです)
是非、手にとって楽しんで下さい。

作品の写真は、工程の写真も含めて、また後日ホームページに
アップします。