みんな地球人

学校の課外活動で、『The Memorial to the Murdered Jews of Europe (ホロコースト記念碑)』に行きました。ホロコーストとは、第二次世界大戦中にヒトラー率いるナチスが計画的に行ったユダヤ人大虐殺のこと。この上なく残虐な計画の元、約1100万人のユダヤ人とその他のマイノリティ民族がその尊い命を絶たれました。2年前の旅行の際に行った時は、”観光スポットの一つ”という感じで、表面的なものしか見ていなかったのだと反省。

ベルリンの街の真ん中に位置するホロコースト記念碑は、命を絶たれたユダヤ人への追悼の意味を込めて、そしてドイツでそんな残虐なことがあったことを忘れないようにするため、2005年に完成しました。でも実は、ユダヤ人の人達はこのホロコースト記念碑のことをよく思っていないそうです。そんな方法でなぐさめてほしくない、自分たちの過去の悲劇は、自分たちのやり方で伝えていく、そんな慰めはいらない、と。

ホロコースト記念碑の近くにはTiergartenという森のように広大な公園があり、その森と一体化させるために記念碑の周りにたくさんの木を植えるという話が出ていたそうですが、ホロコースト記念碑をデザインしたニューヨーク在住のピーター・アイゼンマンがそれを阻止。世間から強制的に孤立させられたユダヤ人というコンセプトが台無しになってしまうというのがその理由だそうです。

1万9073㎡の敷地にコンクリート製の石碑2,711基がグリッド状に並んでいます。厚み95cm、幅2.38mのコンクリートブロックが、色んな高さで連なっている様子は圧巻。(最も背の高いブロックは約4.5m)その石碑群が並ぶ地面は、うねうねとアップダウンを繰り返し、一瞬たりとも安定した足下を与えてくれません。それは、理不尽に自分たちの生活や命を脅かされていたユダヤ人達の不安定な精神状態や不安定な明日を現しているそうです。そして、石碑がグレイなのはもちろんユダヤ人達の暗い日々を現すため。

写真ではわかりづらいのですが、地面がうねうねしているのが見えるでしょうか?

石碑の中を歩くと、迷子になった気分で突然心細くなりました。一体自分がどの方向に進んでるのかわからなくなり、その不思議な感覚に困惑。自分の背よりずっと高い石に囲まれているので、見上げても空は小さく窮屈で、ものすごい圧迫感を感じます。周りの建物の頭が見えているのに、孤独な感覚。デザイナーのピーター・アイゼンマンは、その時のユダヤ人の気持ちをデザインという方法で比喩して、現代の私たちに伝えようとしているようです。

この敷地の地下には、無料で入れるミュージアムがあり、収容所での様子の写真やユダヤ人家族の記録、後に見つかった日記などが展示されています。地上の石碑と下のミュージアムのデザインがリンクされていて、上での感情をそのまま地下に持っていくような感覚です。

命を絶たれてしまった一人一人に、家族がいて、愛する人がいて、日常があって、悩みがあって、ドラマがある。それを思うと、本当に胸が詰まってしまい、やっとの思いで全部を見て回りました。ドスンと重たい気分。ドイツ人は、歴史から目をそらさず、自分たちが過去に犯した罪を絶対に忘れないようにしているように感じます。

一緒に行ったクラスメイトは世界大戦に参戦していた国から来ています。ドイツ、フランス、アメリカ、日本。私たちはそれぞれの国からドイツに来て、そう遠い昔の話ではない戦争の爪痕を、隣に並んで目の当たりにしているのが不思議でした。

帰宅して、ドイツ人のフラットメイトとホロコーストの話をしました。ドイツ人は、この歴史から離れることはできなのだそうです。子供の頃から何度も何度も繰り返し聞かされ、小学校にあがると、毎年収容所跡地への見学があるそうです。オーストラリアに行った時に、イスラエル人の男性と知り合ったのだけど、彼女がドイツ人だとわかった瞬間に急に態度を変えられたこともあると話してくれました。そして、自分が逆の立場だったら同じようにしてしまうのではないかと思うから、その人の失礼な態度も理解できるって。日本も過去に残虐なことをしてきましたが、戦争というと、原爆のことは繰り返し学んでも、日本がしてきたことについてはあまり詳しく習わなかった気がします。

日本は都合の悪いことには蓋をする国だということが、福島原発の件でも明らかになっていて、それはここドイツでもかなり懐疑的に捉えられています。世界における日本政府に対する不信の波は私たち日本人が思っている以上にきっと荒い。日本の政府は恐ろしく幼稚で、精神的に未熟で、原発への対策が現実性に欠けていると非難されています。かたや、別の分野ではクールでスタイリッシュで先進的な国、繊細で礼儀正しく団結力のある国民と思われがち。

他の国から日本を客観的に見ることで、よい面も悪い面も含めて、改めて自分の国のことを考えさせられます。

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