三養荘

ずっと泊まってみたかった伊豆の三養荘に泊まってきました。
大好きな建築家の村野藤吾さんの遺作というより、竣工は没後になるので
完成を目にすることはなかった本当に最後の建築。
たくさんの素晴らしい建築を世に残した大巨匠の最後の建築は
いったいどんな思いや意匠が詰まっているのかずっと気になっていました。
建築家だけではなく、作庭には、京都でもたくさんの庭に携わっている
植治こと小川治兵衛さん。日本の歴史に残る建築家とこれまた日本の歴史に
残る庭師との競演。長年の夢がついに叶いました。

4万坪の広大な敷地に計算された建屋と庭の設計は、目線の位置をうまく
誘導しコントロールする贅沢なプランです。

まず建物に入って、印象的だったのが、各部屋までのアプローチの廊下部です。
村野藤吾さんが追究されていた
外部と内部の関係性が、すごく巧みに表現されていることでした。
屋根の形状がそのまま内部の意匠につながり、外光をうまく内部に
取り入れる。内部と外部の中間のような空気感が漂っていました。

部屋はすごく広くて、視線をコントロールする高さや位置に窓がプランニングされていて、どこの部屋からも中庭が見渡せるようになっていました。
一番のお気に入りは、部屋にある内湯です。
東向きに設置された大きな窓から、朝日を見ながら入る温泉湯は、
朝の冷気と湯気に包まれ、それはそれは幽玄な心地よい時間です。

個人的に小川治兵衛の作庭で大好きなのは、緩やかな丸みを帯びた芝生の
傾斜のパースペクティブと生き生きとした石の使い方です。
それがこの三養荘でも至ところに見受けられ。植治手法を見つけるたびに
ため息の連続でした。

村野藤吾さんがなぜ大好きかというと、建築家の方は、割と建築本体には
強いこだわりと思考はされますが、急に内部になると予算の都合なのか
なんとも残念な空間になっていることが多々あります。
でも、村野さんの建築は、外部も内部も隅々まで計算に計算され、
オリジナル溢れる内装の意匠がどの建築にも溢れているので、
すごく幸せな気持ちにさせてくれます。
三養荘で一番好きな箇所は、新館正面玄関のロビーです。
その中でも村野さんのとびっきりアイデアがつまったモビール風の
シャンデリアです。きっと海の近くでもあるところから釣り竿用のグラスロッド
を使用して土地の特性をリンクして宿のシンボルになるような器具を考えられたんだと思います。
ゆっくりと浮遊する照明は本当に光の塊が浮いているようで、
やさしく迎え入れてくれる玄関にぴったりの照明です。

まだまだ、いっぱいいっぱい伝えたいことはありますが、
日本人に生まれてよかったなーと思い、また日本人であることを
誇りに思わせてくれる端正なデティールや考えに、本当に本当に
大満足でした。写真では、全然伝わりきれませんので、是非、
伊豆に行かれた際は、訪れてみて下さい。
ちょっと他の旅館とは次元が違いますよ。

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